株式会社 浅利建築設計工房

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建築コラム

 【コラム-2】
 日本家屋の座敷には、次の間という前室があり、そのまた前室ともいうべき、踏み込みの間がしつらえてあります。初めて、このような処へ案内された欧米の人達の多くが、「この部屋は何をするところか?」と尋ねるそうです。踏み込みの間は、スリッパを脱ぐ場所などと、半分誤魔化しもつきますが、次の間のそれは、端的に説明する言葉が見当たりません。我われは、履物に下駄を用いた文化を持ちます。足元の悪い日などは、地面から台を遠ざけるために歯を長くした、いわゆる雨下駄を履くわけですが、ここが欧米と異なるところで、彼らは、靴をゴムで覆って水を遮っているのです。この事を一言で、物質で「遮る」か、空間を設けて「遠ざける」かの違いといえましょう。「忌む」という言葉は、憎しむ・嫌うという感情と、避けるという行為とを同時に表して、我が国特有のものだそうです。雨や暑さには、防水材料や断熱材料を貼り付けて防ぐのではなく、高い屋根に、瓦を並べて順次下に水を流し、軒もまた、深く張り出して対処しています。一方、床を持ち上げて、外側に縁側や入側を設けたのも、照り返しをやわらげ、湿気を防ぐものだったのでしょう。このように、初めに挙げた次の間や踏込の間は、音や視線を避けることはもとより、更には、気配や気配りの為の装置として、重要な役目をもったものと言えそうです。この種のものを説明するとき、概して「無用の用」などと禅問答のようなことを言っていますが、もっと科学的になすべきでしょう。現在では、このような仕組みを専門家の間で「スペ-スウォ-ルシステム」と呼び、設計手法の一つとして、幅広く応用されています。また、ホテルのロビ-に付随したトイレの入り口などに、扉を用いず、折れ曲がって入るようになっているものがありますが、これを「トラップシステム」と呼びます。フランスの放送局では、スタジオの入り口を、曲がりを重ねたこの方式にして、吸音材が貼られているそうですが、廊下には、全くこのスタジオの音が、漏れ聞こえないということです。今一度、例を下駄に戻しましょう。靴は、爪先・中底・踵とそれぞれ呼びますが、これは、単にその場所を指すに過ぎません。しかし、下駄はご存じのように、台・歯・鼻緒の三つの部分から構成されています。丁度、日本家屋のように各自の役目を分担し、目的機能を果たしていると言えます。このことに今一歩立ち入ってお話ししましょう。レンガ造りは、一枚一枚のレンガを積み重ねるたびに、耐力を得ながら仕上がってゆきます。しかし、日本家屋は、柱が立ち、梁が渡され、屋根の小屋が組まれ、更には、壁が塗りあがって、初めて地震にも耐え得る構造になるのです。また、障子などの格子は、日本美の代表のように言われ、日本を印象づけるポスタ-の家並みの写真には、必ずといってよいほどに、この格子を写し出しています。でもこれは、美装の為にだけにあるものではなく、主な目的は、建具の強さを保ち、紙を張る骨格として(格子戸の場合は目隠しとして)果ては手掛けの役目までもたせています。欧米の美しい扉は、美しいものを(言いかればライオンや唐草様の彫刻を)取り付けた扉なのです。くりかえせば、美しいかどうかは、美しいものが取り付けてあるかどうかということでしょう。このことは概念的に、機能の「加算システム」と呼べそうです。                                                                                               ・・・to be continued



 【コラム-1】
 デザインの基本的な事柄について、触れてみましょう。
まず、デザインとは「物を構成して、物と人との良い関係を創り出すこと」と、言えそうです。二、三回家を建て替えたことのある人の中には、水を向けて少しあおりますと、「わたしゃ、こと建築の設計についちゃ、ちょっとうるさい方でねエ・・・」と出てくる人もいます。素人のうるさいは、よく知っていることを、鼻にかけての言葉でしょうが、では、何を知っているのかとよくよく聞いてみますと、少しばかりの材料や造り方を、見覚えた程度の人が殆どの様です。このことは先ほどのデザイン(設計)の定義からして、らち外のことを言っていることになります。「物を知ること」と「物と人との関係を知ること」とは全く別のことなのです。ちょっと唐突ですが、ここに安楽椅子があると思ってください。これは座が低く、背もたれもゆっくりと傾いて、座り心地も良さそうです。では、この座面をを少しずつ高くして、座の奥行を狭めながら、背を垂直に近ずけていくと、徐々に作業性が増して果ては、事務椅子になってしまうでしょう。これによって、作業性が加われば加わる程に、居住性が減退してゆくことに気が付きます。ちょっと難しい言葉で、「居住性と作業性とは、相関において、共に関数の系が成立する」と言う事が出来ます。この様に、物や空間は、居住性と作業生とを同時に持ち合わせているものですが、これを有効に機能させるためには、他との関係が、重大な要素となってきます。このことは、安楽椅子で一般の食卓に向かったとしたら、無理な姿勢を余儀なくされて、著しく居住性が損なわれることも明瞭ですね。従来の進歩の概念は、機能性・生産性・経済性に代表されていました。現代文明は、生活の質(居住性)を高める事よりも、能率(作業性)の向上に、かなり力を入れてきた様です。これは、進歩の度合いが、数量的に表し易いことも手伝って、次々と、我々の期待がエスカレ-トしたことも、いなめない事実でしょう。これをエレベ-タ-の速度に例えるならば、昨今毎分300、400、500、メートルと進んで、東京スカイツリ-では600メートル、世界最速台北101では1010メートルのものが取り付けられています。ですが・・・これでもエレベ-タ-乗り場には、待ち遠しさのあまり、足踏みしながらイライラしている人を見かけます。もうこれでは、漫画の情景としか言い様がないのですが、でも、これを他人事として笑って済ます訳にはいきません。
では・・・その壁面いっぱいに、鏡を取り付けては如何でしょうか。この時「待つ」という時間は、自分の姿を「見る」という時間にすり替わります。この様な作用を「ファクタ-の転換」などと言っていますが、これこそまさしく現代に要求されたデザインであり、言い換えれば、現代人が求めている物と人との良い関係なのです。


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